ワークショップ「広島」

 
■日時 2008年3月20日(木) 14時00分~17時10分
■場所 広島大学附属中・高等学校


広島大学附属中・高等学校において、経済教育ワークショップ(広島)を開催した。当日は、広島県下の学校教員および経済教育諸団体関係者など34名の参加を得て、 学校教育で必要な経済教育の「あり方」やどのように経済教育に取り組み授業を展開するかについて、活発に議論・意見交換を行うことができた。


【プログラム】

13:30~     受付

14:00~14:05 開会挨拶 弘前大学教授 猪瀬武則

14:05~15:05 講演「先生方に知っておいていただきたい経済学の考え方」
         (同志社大学経済学部教授 篠原総一)

15:05~15:40 意見交換「公民教育・授業の課題」
         (司会 高林賢治 広島大学附属中・高等学校)

15:40~16:40 模擬授業「公共政策をどうするか?無知のベールゲーム」
         ~ご出席の皆様を生徒として行ないます~
         (弘前大学教授 猪瀬武則)

16:40~17:05 質疑(司会 高林賢治 広島大学附属中・高等学校)

17:05~17:10 閉会挨拶 経済教育ネットワーク代表 篠原総一


【ワークショップの要約】

猪瀬武則先生(弘前大学)の開会挨拶に続いて、篠原総一先生(同志社大学)が、「先生方に知っておいていただきたい経済学の考え方」というテーマで講演された。

講演では、篠原先生は、まず、「なぜ経済教育か、子どもたちに教えたいこと」として、次のように提起された。経済教育は、経済学をそのまま教えるものではなく、 子どもたちが社会の大きなしくみ(政府や金融など)を知り、それぞれの働きを理解し、個人の豊かな経済生活の実現や住みよい社会作るため考える目を養うものである。 その際、社会のあり方を考えるとき、正解は一つではないことに気づかせることが大切だ。そして、経済教育を進めるにあたり、中学校の数学を知っていると小学校の 算数の問題がよくわかるように、現場の先生方に経済学の考え方を知っておいていただければというのが経済学者の思いであり、まず、東京と大阪で8月に高校教員対象の セミナーを実施する。

続いて、篠原先生は、経済学の考え方を具体的に紹介された。中心は、市場メカニズムの意義と政府の経済活動の意義について、効率と公平という観点からの解説であった。 市場が価格の変動により希少な資源を効率的に配分する機能を備えていることなど、経済学の考え方のポイントがわかりやすく示された。そして、現行の教科書の不十分さや 大学入試問題の問題点も指摘され、参加された先生方に強い印象を与えた。

講演後、高林賢治先生(広島大学附属中・高等学校)の司会により、授業で需要・供給曲線を使うことが適切であるかなどについて活発な質疑・意見交換が行われた。

休憩の後、猪瀬武則先生(弘前大学)が、「公共政策をどうするか?無知のベールゲーム」というテーマで、参加された先生方を相手に模擬授業をされた。

模擬授業に先立ち、猪瀬先生は、まず、ご自分のかつての実践の思い出をふり返りながら、多岐にわたって経済教育の課題や論点を示された。そのなかで、先生は、 合理的な経済人仮説に見られる人間観や功利主義に対する現場の先生方の警戒心を指摘された。そして、経済教育を倫理的に基礎づける課題に関して、アメリカの 経済教育協議会の実践例・カリキュラムを紹介された。この実践は、10の単元から構成されており、最後の10単元目にロールズの公正と正義を「無知のベールゲーム」として 教材化している。

模擬授業では、猪瀬先生は、参加者をグループに分けて、次のような「無知のベールゲーム」を展開された。ゲームは2回。1回目は、各グループに社会経済的に異なる 立場・役割が与えられ、配付された「経済政策決定表」にしたがって、累進課税か均一課税か、私的保険か国民保険かなどの投票(選択)を行う。 2回目は、全グループが自分たちの立場・役割がわからない(「無知のベール」)の状態で1回目と同じ経済政策について投票する。最後に、1回目(「私益追求」)と 2回目(「私益の棄却、公共善」)で、投票がどのように変化したかをふり返り、全体で「公平」について考えた。

模擬授業終了後、高林賢治先生の司会により、質疑が行われた。閉会時間が迫っていたため、十分に時間がとれなかったが、ゲームに参加し、猪瀬先生からコメントを 受けるなかで、公共性などの経済倫理について先生方の間で問題意識の共有化・深化が進んだ。

 最後に、篠原先生が閉会の挨拶をされ、広島でのワークショップを終えた。挨拶のなかで、先生は、経済ネットワークの設立趣旨や東京部会・大阪部会での活動を紹介され、 経済ネットワークおよび8月に実施予定の高校教員対象のセミナーについて参加を呼びかけられた。

なお、当日のワークショップについては、広島大学附属中・高等学校の高林賢治先生がビデオで記録してくださっている。篠原先生の講演や猪瀬先生の「無知のベールゲーム」の 模擬授業について詳しく知りたい方は問い合わせていただければ幸いである。


(文責:山本雅康)

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